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知識のブラックホール

本とかオーディオブックとか。知識収集活動全般。

書評:『地方は活性化するか否か』と個人的見解

通称「ちかすい」で有名なWebコミックの書籍版の感想+α。

個人的には地方が滅びようがどうでもいい。

ただ、税金の無駄使いと権力による横暴は許せない。そういう屈折した理由で非常に関心のあるテーマ。

地方は活性化するか否か マンガでわかる地方のこれから

地方は活性化するか否か マンガでわかる地方のこれから

Web漫画版はこちら:Web4コマ 地方は活性化するか否か

可愛らしいイラストとは裏腹に厳しい現実を突きつけてくると評判のマンガです。 一番エグいのは8章あたりかな。

簡単な紹介

人口30万人クラスの地方都市を舞台に女子高生が地方の現状とこれからを考えていく、というストーリー。 モデルになったのは秋田市ともっぱらの噂。 マンガとコラムの2段がまえになっています。


各章ごとに印象に残ったところと個人的見解をグダグダと書いていきます。 画像貼ると怒られそうなので引用は自粛。

第1章、第2章

起承転結でいうところの「起」ですね。主に人口減少問題から。

人口減少問題を主に「出会いの機会がない」と車社会に重点を置いて説明していますね。都会だって電車通勤と長時間労働で出会いの機会なんてないと思いますけどね。

あと世の中の雰囲気の問題もとりあげられていますが、これはマスコミが不景気不景気騒ぎすぎた結果ではないか。 それと子育てに金がかかるだの、大変だっていうイメージ煽りすぎとも思います。

男女ともに高望みすぎってのもありそう。

第3章

よくある地方都市の現状とか。ビジネスホテル、居酒屋、葬祭場の三点セットが紹介されていますが、人口30万人規模の地方都市だけの話ではないですね。京都市でも葬祭場は増えてますし。 どっちかというと都会はデイケアセンターと老人ホーム、それに大型ショッピングモールの三点セットなのかな。

私の生まれた京都市南区の事例だと、京都機械の工場がショッピングモールに、大同なんたらの工場は老人ホーム。 住宅公団の団地は半分デイケアセンター。村田製作所の工場跡は今は空き地です。 どっちかというと京都市ではないのかもしれませんがキリンビールの京都工場もイオンモールです。

ついでに書いておくと、私の生まれた病院もデイケアセンター。事故で搬送された病院も老人ホーム。 京都駅から一駅という絶妙な立地が大人気みたいです(笑)。もちろん商店街はシャッター通りです。 たとえ京都市だろうと辺境はこんなもの。


実は観光客誘致だの留学生云々なんて言ってる場合じゃないっていう…。
地方に旅行に行って悲しいのは駅前の一等地にパチンコ店と全国チェーンの居酒屋に靴屋っていう金太郎飴みたいな風景ですかね。

なんで都会に出ていくのか その1

著者の主張はちょっとずれてるように思います。

私は小学校の頃に1年半ほど愛知県の地方都市に住んでいたことがあります。あと静岡県沼津市に2年ちょっと。 なので多少は人口30万人以下の都市の人間の立場もある程度はわかるつもりです。

習い事とか何か新しいことをやろうとすると、選択肢がないんですね。公共交通機関が貧弱。 若者が遊ぶようなところもほとんどない。あるとしても駅の近辺だけ。 若者向けの店*1も県庁所在地までいかないと無いとかね。

大学や就職した際の同期入社の知人で、地方出身者と話してると都会へのコンプレックスは結構感じましたね。 全国チェーンの店舗の有無を話題にしたりしますから。

自分の地元に全国チェーン店が進出すると、自分の故郷も都会になったという変な優越感が湧くみたい。

若者が都会に出て行くのは、こういうコンプレックスは大きいと思います。メディアを通じて流れてくる都会のイメージと、自分たちのギャップ。 都会によく行く機会があればあるほど、大人になったら都会に行きたいと思うのは普通ではないでしょうか。

地方=ダサい

という図式を崩さないと。

あとは仕事がないから、ですかね。就職して沼津に配属されて、会社にムカついて仕事を探そうと思った時、転職先がないんですよ。 結局東京行くしかないじゃないかと痛感しましたから。地方に行くと頭脳労働者は転職先がないです。

なんで都会に出て行くのか その2

答えは人間関係ではないでしょうか。

人口30万人クラスなら問題無いかもしれませんが、数万人規模の都市ならちょっとしたことでご近所の噂になります。 都会から田舎の小学校に転校した際にはいろいろ言われましたし、出戻りした形の父は結構気まずい思いをしたようです、ハイ。

良くも悪くも都会のドライで流動的な人間関係になれた人間に、町内会強制加入とか煩わしい付き合いはしんどいです。 だって発想が古いのと、共働き世帯とか夜勤、あるいは長時間労働への配慮ないし。程度問題だろうと思いますが…。

極め付けは暗黙のルールというか、明文化されていない変なしきたり。草むしに参加しなかったら云々とか。

どう表現すれはいいんでしょうかね。田舎の身内と話していてもそういう感覚のズレは大きいです。

第4章

地域活性化に必要なもの3つ+1、かな。わかもの(若者)、ばかもの(馬鹿者)、よそもの(部外者)、そして、きれもの(参謀)

三国志でいうと劉備張飛関羽孔明かな?桃太郎でいうと、桃太郎本人と猿犬雉?どれがどれかは置いといて。

真面目に書くと、

  • 新しい発想・行動力 → わかもの
  • 積極性・大胆さ   → ばかもの
  • 客観的な視点    → よそもの
  • 戦略的アプローチ  → きれもの

というのが紹介されています。「ばかもの」っていうのはどっちかというと「うつけ」かな。信長みたいなやつ。

まあいろんなタイプが必要って話ですね。地方で「きれもの」がいたとして、果たして周囲の理解を得られるかな。

第5章

鶏と卵な話。地域活性化と賑やかしは別。正論ですね。

恒久的に人が住むようにしないとダメ。一過性のイベントではその場しのぎなのでダメってのがこの章の要点かな。 お金を使って人を呼んでもダメって話。

お金を稼ぐ仕組みを作らないといけない、とまでしか言及されてないですね。

「地方の資本」で「にぎわいが生まれる場所」を作り、守っていくべきではないでしょうか。

これは見事に地元の有力者・富裕層がお金を出せっていうのと同義語ですね。

前回のエントリで紹介した『稼ぐまちが地方を変える 』にあるのと同じ話ですね。こちらは規制緩和の必要性も説いていますが。

個人的見解としては産業振興策、幕末の藩政改革みたいなことをやらないといけないと思うんですけどね。新しい産業を創り出すとか、 特産品の専売とか、民間の事業を武士のものにしたりとか。

殿様からしたらお家の存続というまさに死活問題だったと思うんですね。まさに真剣勝負、フルコミットメント。

第6章

なんか税金にたかる口実に飛びつく政治家多すぎ。 バズワードに引っかかりすぎ。

補助金ではなく減税とか後払いの報奨金がいいんちゃうかな。

せっかく始めたのにちょっとしたクレームでやめてしまう事例について

公序良俗に反するものや、違法行為でもないのであれば、冷静かつ丁寧に説明し、時には反論するくらいの姿勢で臨むべきです。

そうこれ。「公序良俗」ね。公序良俗に反しているものに限ってやめなかったりするんだよなあ*2

改革だの活性化だの言って公をないがしろにしすぎ。

第7章

この章と次の8章がエグいんです、この漫画。コラムがダメ出しの嵐です。

成果測定がないんだよね。実際いくら使って、いくら儲かったってのが。 あと身銭きらないよね、みんな。金持ちがかくれんぼしてるというか。下手に金出すとたかられかねないのかな。

トップページにFlashバリバリとかやめような、地方行政団体のWebページ。 あと観光客呼び込んで金落としてもらおうってのもほどほどにして欲しいね。

第8章

この章はやばい。二重にやばい。まず登場人物のキャラが途中で激変している。 そしてえげつないキーワードの連発。鬼だな作者。

第8章のコラムより引用。

行政は「予算」を消化するのが目的。委託事業者は「器」を作るのが目的。 民間は「行政が何かやってる、予算があるなら乗ろう」という場当たり的思考。

ああ言っちゃったよ。サクッと書いてるけどいいのかコレ。 霞ヶ関のお役人様が黙ってませんぜ。

恐怖の三連コンボ

  • やりっぱなしの行政
  • 頼りっぱなしの民業
  • 全然関心なしの市民

だそうで。詳しくは本編をどうぞ。

活性化について

セリフまわしに違和感ありますが、「満足感」や「楽しさ」がないと続かないってのは全くその通りですね。

楽しい地方活性化とか楽しい地方創生…いいかもですね。

いっその事、『無理なく続けられる年収10倍アップ(地方)活性化法』とか(笑)*3

ただ問題は、楽しいからそれをやる、やりたいから(それをやる)みたいな行動を社会がなかなか許容してくれない感じがしますね。 仕事は辛くて厳しいものだとか、仕事に対して文句を言う奴はけしからん的なノリというか。 みんな楽しくないのに自分を押し殺して何かをやってるっていう。

日本社会全般の傾向として、自己顕示欲とか承認欲求を蔑むような風潮があるようなないような。

良い意味での役得というか、私利私欲を戒めすぎていて、みんな萎縮してる。 なのに時々私利私欲だけを追求してる輩が叩かれることなく一世を風靡してたりする。 なんでアイツだけ叩かれないんだよ、みたいな妬みの大渦みたいなのが湧き上がる。

で、最後はかなりの確率で「奢る平家は久からず」な展開となってカタルシス。

これではリーダー目指す人間は出てこないよね。ローマ人の物語 で名高い塩野七生さんの表現を借りると私腹を肥やしたが同時に国益に貢献したユリウス・シーザー・カエサルみたいなリーダーが必要な気がする。

もっともらしいお利口な理屈を掲げた政治家と役人が税金を無駄遣いしてる。 いわゆる嫌儲思想が足かせになって、お金儲けの話ができないのと違うかな。

あと継続とかメンテナンスって概念、日本人苦手ですねぇ。古代ローマの街道とか水道インフラの維持に対する態度を見習ってほしいところ。

それがぼくには楽しかったから (小プロ・ブックス)

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無理なく続けられる 年収10倍アップ勉強法

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第9章

本編だと「ピエロが必要」という表現になってるけど要は何か担ぎ上げる神輿が必要ってことかな。 人々の関心を集める何か。求心力のある旗振り役マジック・ザ・ギャザリングでいうと「嘲るエルフ」?*4

ちょっと外れてるかもしれないけど、幼稚園児や保育園児は一番楽しそうにしている子供の真似をするそうですね。 何だかわからないけど楽しそうにしている、みたいな存在が求められているのでしょうか。

内容についてのまとめ

「まずは関心を持ちましょう」というのが結論なのかな?

確かマザーテレサだったかな?

愛の反対は無関心

本書では「どうでもいい」という表現になってますが。郷土愛があるかどうか。私の郷土愛ゲージはゼロですけどね。

過去記事で紹介した、『稼ぐまちが地方を変える』にもあったけど、当事者の参加が足りないのと、やりっ放しパターンが多いのかな。効果測定がないし。

audiobook.hatenablog.com

難点を挙げるとすると、データの類が出てこないところかな。定性的にはバッサリとダメ出し出来てるんだけど、 定量的なデータはないんでちょっと弱いのかな。

逆に言うと、問題提起とアクションを促すという意味では成功してる。こういうわかりやすいダメ出しは貴重。 お役所は無謬主義で失敗してもあたかも成果があったかのような作文書いちゃうのがオチだろうから。

個人的見解と疑問

地方のリーダーについて

かのユリウス・シーザー・カエサルよろしく、集団の利益と私腹の両方を肥やすようなリーダーがいない。

ユリウス・シーザー・カエサルについては塩野七生さんの、ローマ人の物語を読んでもらうしかない。私の理解ではカエサルは間違いなく私腹を肥やしたすけべなハゲであり借金王であるが、国を豊かにした稀代のリーダーである。

当時の感覚からしても清廉潔白でもなかったであろうことは容易に想像がつく。

人口問題について

若者を労働力扱いしようとか、都合良くタダ働きさせようってのもやめような。

高卒だろうが大卒だろうが、時間とお金、そして努力の結果としてその経歴を得てるわけで。 ピカソに5分間絵を描かせるといくらかかるかっているエピソード、調べてほしいですね。 若者は産む機械でも働く機械でもないんだよ。

疑問点

地方を活性化する必要があるのか。本当に困っているのか?

本気で困っていたら地元の人間が奮起するか、都会への移住が進むと思うんですけどね。 「地方活性化」が予算獲得とのためのバズワードになっていませんか。 いや、確かに衰退しているのは認めますが、果たして困っているのでしょうか。

大規模スーパーは人口が減少すると撤退する可能性があるから云々というのはもっともらしいけど。 地元資本でも閉店する可能性はゼロではないよね。

新しい互助組合?が必要な気がしますね。疎結合で負担にならないような、ゆるい相互協力。 やらされ感のない相互扶助

というか、行政が自治会や町内会に近い、ドライで明文化されたルールに基づく助け合いのためのフレームワークになって欲しいんですね。 任意加入で、各人がそれぞれできることをやる、みたいな形を。一種のクラウドソーシングでもいいし。

ちょっとした頼みごとを仲介するネットベンチャーがアメリカにありませんでしたっけ?

そもそも

地方創生とか地域活性化とかいう表現がダメなんではないか。 要するに地方の経済を立て直す必要があるってことでしょ?

地域経済の再生って言わないと。

普通の人が普通に働いて結婚して家買って子供育てて…という普通の生活ができるような、地方在住の普通の人のための ビジネスモデルを作ればいいんではないだろうか。

普通の人が普通の生活が送れるようにするのが政治でしょうよ。

書評を書いているうちにグダグダ感全開になってしまいましたが、今日は(?)ここまで。

それでは。

*1:主に服とか

*2:武雄のアレとか海老名とか

*3:ちくっちゃダメだよ

*4:ネタがマイナーでごめんなさい