書評:『「好きなこと」だけして生きていく。』
はっきりとは書いてないけど、アドラー心理学系の本かな。
「好きなこと」だけして生きていく。 ガマンが人生を閉じ込める
- 作者: 心屋仁之助
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2015/02/13
- メディア: Kindle版
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キーワードは罪悪感と覚悟でしょうか。
一番面白いのは第3章あたり。 自分の好きなことが見つからない、という人は第5章が参考になると思います。
やりたいことに取り組みたいけど迷いがある、あるいは、 対人関係や仕事でがんじがらめの方にお勧めしたい一冊です。
読んで一番の収穫
以前、オーディオブックで聴いて、いまいち腑に落ちなかった、嫌われる勇気の理解が深まった気がします。特に褒め方の話。 「好きなこと」を「自由」に置き換えてもほとんど内容に破綻がないと思います。
褒め方について
- 「えらい」もダメ
- 「頑張ったね」もダメ
頑張ったと言って褒めると、頑張らないと褒めてもらえないというメッセージになってしまう。
要するに、『嫌われる勇気』に書いてある承認欲求の否定。褒めたはいけないの理由が書いてある。
親が喜ぶ姿を見たいがために子供は自分を押し殺す。
「褒めるではなく、感謝する」(書いてないけど)
学校ルールの呪縛
- 楽するなという呪縛
- ズルはいけないという呪縛
合法的にズルするなら問題ない。
実際にあるハードルではなく心理的なハードルを避ける。
楽していい。働かずに暮らしてもいい。遊んで暮らしてもいい。
自分に許可を出す。
働かざるもの食うべからずという刷り込みを除去すれば、 食えるようになる(と信じる)。
以下、章別の感想。
第1章
自分には価値があると信じることにしただけなのです。
この手の書籍にあるパターンは、一定期間がむしゃらに何かに打ち込んだ後、方針転換したらうまくいったというパターンかな。 ある程度の努力の期間の後で、常識と逆のパターンに入るというカタチ。
(前略)でもその反対は、頑張らなけらば褒めてもらえない、です。
子供の努力を褒めることの問題点、ですね。
第2章
本当のお金持ちはお金に追われていません。
お金持ちはお金についての考え方が違うんでしょうな。
私利私欲で作ったものがみんなを幸せにして、お金まで入ってくることもある。
私利私欲というと悪という単純な図式ではないんですね。自分の身内を喜ばせようとして書いた小説が思いもかけず大ヒットするというパターンでしょうか。
好きなことをしていると、なぜかお金が入ってくるのは、私利私欲で生きるのに罪悪感がないからです。 自分には存在するだけで価値があると思っているので、私利私欲で生きていようと、人の役に立っていなかろうと、豊かさや幸せを受け取っていいと思っているからです。
目から鱗。罪悪感が邪魔している訳か。
「価値=役に立つ」ではないのです。
この辺も発想の転換なんでしょうか。確かに貴金属の類など、役には立ってないようなものはありますね。
それからこれも。
もし憧れの会社に入って、その会社でやりたい仕事があるなら、コピー取りの仕事もやりたい仕事につながっているはずです。
それが下積みに思えてしまうのは、すでにやりたい仕事をあきらめてしまっている、あきらめるクセがついているのかもしれませんね。
実は私、新卒で入った会社のOJT発表会で「下積み経験」という単語を使って怒られた 経験があります。
今ようやく理由がわかりましたね。
自分がどういう仕事がしたいかもわからず何となく就職して、まして希望した部署でもなく、しぶしぶ働いているという心理がにじみ出ていたのでしょう。
さぞや不愉快だったのでしょう、あの無能に見えた上層部も。 いやさすが上層部なのかな。
辞めて正解でした。あのOJT成果発表会の直後に辞めればよかったのかな。
第3章
好きなことをしようと思ったら、人に迷惑をかけて、嫌われる覚悟がいります。
そのまんま、嫌われる勇気ですね。
迷惑をかけていないつもりでも、実は迷惑がかかっている。 お互い様の精神で気楽に行くしかない。
余談だけど、我を張る=我ん張る=がんばる、だそうですね。
この本を読んでいるとどうも日本人は頑張ることを神聖視しすぎなんですね。 それと、お互いが相手に迷惑をかけないようにしようとして、窮屈な思いをしてる。 相互自粛社会(笑)。
自分は普通だと思っていると普通になる。自分はすごいと思っているとすごい成果につながる、という考え方も面白い。
第4章
今までと逆の生き方をしようと思ったら、最初は頑張らないことを頑張ってもいいのです。
なんでしょう、執着しないことに執着…みたいな?
人に迷惑をかけずに生きようなどというのは、実は業魔なことかもしれないのです。
インパクトありますね。人様に迷惑をかけるな、とさんざん言われているだけに。
それに人に迷惑をかけないということは、周りの人がその人に優しくしたり、活躍したりする機会を奪っていることになります。
これはなんとなく、以前聞いたインドやアラブ圏の乞食の発想に似ている気がします。 曰く、自分たち貧しい人間は裕福な人間に施しのチャンスを与えているとかなんとか。
心理学ていう共依存に似ているように思うのですが、いいんでしょうか。
これも強烈。
あやまればいいや、と思った方が、あやまらなくてすむのです。
部下がしくじると自分の評価が下がるなどと考えるとかえって部下がミスをするらしい。 逆転の発想。
第5章
本当に好きなことの見つけ方。
好き嫌いは変化するが、本当に好きなものはなんとなく好きなので、変化しない。
損得抜きで、理由はないけど好き、みたいなものを突き詰めていけばいいみたい。
本書によれは、こっちを選んだ方が得だから、という理由で選んでいるものは「本当に好きなこと」ではないようです。
もう一つは、他人の批判を恐れて、正しいか間違っているか、という考え方 も影響しているとか。
人は「本当に」好きなもののことを考えるとなぜかワクワクしたり、テンションが上がったり、静かに満たされたりします。
なぜかわからないけれど、やっぱり好きで、なぜかわからないけれど、そこに触れているとテンションが上がる。
それが「本当に」好きなものではないかと思うのです。
以前読んだ、 人生がときめく片づけの魔法 となんとなく通じる内容ですね。
世間体や小賢しい理屈に引っ張れて考えだした「好きなこと」に縛られると うまくいかないように思います。
まとめ
好きなことでは食べていけない、というのも一種の妬みなんでしょうか。 あるいは、本当に好きなことがわからないまま、偽物の好きなことを仕事に して失敗した人からの忠告なんでしょうか。
本気で好きなことをやりたいなら、人に嫌われるような嫌なことも、覚悟して受け入れろというのが結論かな。
余談
この本を読んでいると、ベーシックインカム、実現できそうな気がしてくるから不思議。
それではまた。