知識のブラックホール

本とかオーディオブックとか。知識収集活動全般。

戦略立案の参考になる名著(書評:情報なき国家の悲劇 大本営参謀の情報戦記)

地味に参考になる本。戦時中の日本軍が主な題材ではあるけど、今の日本の大企業にも言えるような、耳の痛い内容が山盛り。

情報なき国家の悲劇 大本営参謀の情報戦記 (文春文庫)

情報なき国家の悲劇 大本営参謀の情報戦記 (文春文庫)

メインタイトルの、国家の悲劇という部分が全てを表している。

読みながらいろいろと考えさせられることが多かった。そういう意味では非常に有益な読書だった。


毎度のことながら、いまいちまとまりに欠ける書評になっているけど、興味があれば是非一読してほしい本。

概要

戦争中の日本軍、戦後の自衛隊など著者の実体験をネタに、情報とはなんぞや、というところから始まって、日本の情報収集と、それに基づく情勢判断がどういうカタチだったかを解説している。

ものすごい反面教師事例の山。この本を読む限り、勝てる要因がなさすぎて涙が出てくる。

読んで思ったこと

とにかく準備不足で太平洋戦争の開戦に至った、ということは理解した。同時に、今の日本の大企業も、あまり変わらないままなんじゃないかと思った。

ろくに情報収集も分析もせずに大風呂敷を広げて売れもしないような製品を、必死で開発している会社のが多いんではなかろうか。

高校入試・大学の場合は過去問を分析して出題傾向をつかんだりするというのに。


自分のこれまでを省みる

情報収集不足で判断をミスった例を挙げるときりがない。そういう意味では人のことをとやかく言えない。

大きなものでも以下の通り。

  • 大学の研究室選び
  • 大学院への進学の是非
  • 研究テーマを決める際の事前調査(文献調査、いわゆるサーベイ)
  • 就職活動、インターンシップなど
  • 運転免許を取るかどうか、あるいはどこの教習所へ行くか

そして今もなお、十分な市場調査もなし趣味の延長でアプリケーション開発をやっているという。

ちゃんとしたサーベイの仕方を学ばないまま、成り行きで研究の真似事をして大学院を修了したのはまずかったと今でも思っている。

もっといろんな人から話を聞く機会を持つべきだとは思っているけど、そもそも人付き合い自体好きじゃないという根本的な問題がある。

あの戦争に関する話とか

ものすごく杜撰だったという話が随所に出てくる。 開戦後、半年以上経ってからアメリカ専門の情報担当課ができたりとか、苦戦続きの状態(昭和十八年末)になってからアメリカの戦法を研究し出したりとかひどすぎる。

有名な孫子の兵法の、

敵を知り己を知れば百戦危うからず

の逆をやっている。 戦果誤認の事例(台湾沖航空戦)とか、悔しくて憤りさえ覚える。

数が多いのであえて引用しないが、著者本人ではなく他の軍人、あるいは関係者が著者に対して述べた見解とか忠告も非常に参考になる。

根性より鉄量(あるいは、人海戦術の限界)

「鉄量を破るものは鉄量以外にない」
堀 栄三. 情報なき国家の悲劇 大本営参謀の情報戦記 (文春文庫) (Kindle の位置No.345). . Kindle 版.

鉄板で防御した機関銃と地雷で防護された陣地に籠もれば、いかに強力な軍隊でも苦戦する、という事例を解説した後の文章。そりゃそうだよねとしか言えないのだけど、精神論の前にちゃんと装備を整えないといけないという教訓。

鉄量は火力とか物量に置き換えてもいいかも。要するに竹槍で戦車とは戦えないよ、って話。

日本企業の設備投資、あるいは社員に支給するパソコンのスペックに関しても同じことが言えるのではないかと思う。必要なものにお金をかけるより個人の頑張り、つまり人海戦術で解決しようとするのが日本人並びに日本企業の悪い癖。サービスの類を利用してお金で時間を買うというのも嫌がるし。


日本刀で銃を持った相手と戦えるのは漫画とアニメの中だけですよ、と言い換えてもいい。

暗号がらみの話

日本は米軍の知識に乏しいが、ドイツではこれを米軍の典型的な暗号書奪取作戦だと見ている。米軍は欧洲でもこれに類似したことをしており、重要書類を奪取する専門部隊を持っている。撃沈した船に潜水夫を潜らせたり、沈みかけた潜水艦に跳び移って暗号書を奪ったり、停泊中の商船から巧みに暗号書を盗んだりするのを常套戦法としているから注意が肝心だ。
堀 栄三. 情報なき国家の悲劇 大本営参謀の情報戦記 (文春文庫) (Kindle の位置No.478-482). . Kindle 版.

戦時中の時点で、ドイツの将校からミッドウェーの惨敗について暗号が解読されている可能性をすでに指摘されていたらしい。打つべき手を早く売っていれば……。

暗号化に使う機械一式がアメリカの手に渡っていたという話もあるし。

今のコンピューターの暗号系技術って結局、アメリカの技術な訳で。そう意味ではどうにもならない気もする。

暗号に敗れた日本

暗号に敗れた日本

まだ読んでないけどいずれは読むつもり。

情報収集とかスパイ対策とかの話

第二次世界大戦で日本が開戦するや否や、米国がいの一番にやったことは、日系人の強制収容だった。戦後になっても日本人は、これが何のためだったか知っていないし、知ろうとしない。
堀 栄三. 情報なき国家の悲劇 大本営参謀の情報戦記 (文春文庫) (Kindle の位置No.1035-1037). . Kindle 版.

日系人によるスパイ活動を封じるため、というのが著者の見解。言われてみればその通りだなと思う。

日本はハワイの真珠湾を奇襲攻撃して、数隻の戦艦を撃沈する戦術的勝利をあげて狂喜乱舞したが、それを口実に米国は日系人強制収容という真珠湾以上の大戦略的情報勝利を収めてしまった。日本人が歓声を上げたとき、米国はもっと大きな、しかも声を出さない歓声を上げていたことを銘記すべきである。
堀 栄三. 情報なき国家の悲劇 大本営参謀の情報戦記 (文春文庫) (Kindle の位置No.1080-1083). . Kindle 版.

現在の日本に至っていはスパイ天国などと言われる始末だし、マスコミがすでに売国奴というか利敵行為をなんとも思わない風潮だしどうにもならない。

孫子の言葉の中でもあまり知られていないものに、「爵禄百金を惜しんで、敵の情を知らざるは不仁の至なり、人の将にあらざるなり、主の佐にあらざるなり、勝の主にあらざるなり」という言葉がある。大要は、敵情を知るには人材や金銭を惜しんではいけない、これを惜しむような人間は、将帥でもなく、幕僚でもなく、勝利の主になることは出来ないという意味で、情報を事前に収集するには、最優秀の人材とあり余る金を使え、と教えている。
堀 栄三. 情報なき国家の悲劇 大本営参謀の情報戦記 (文春文庫) (Kindle の位置No.1046-1050). . Kindle 版.

情報集の重要性の話。

同時に現状としてインターネットにしろパソコンにしろ、アメリカ企業の製品・サービスに依存している自分が情けない気もする。

便利さという利益の前に相手の思うままに振る舞うしかないのか。

まとめ

興味を持ったきっかけは、例のブラウザゲームだけど、有益な読書だった。

太平洋戦争の悲劇についても理解が深まったし、日本企業の不合理に関しても考察を深めることができた。

問題はこれをどこまで今後の自分の人生に活かしていけるかどうかという点。勉強会が終わった後の懇親会とか、できるだけ出るようにしようと思っている。

こういう本こそ管理職研修の課題なんかにいいんじゃないだろうか。

おしまい。