かつての時代の寵児の一代記(書評:『わが闘争』 by 堀江貴文)
Amazonの割引キャンペーンにコロッとやられて一気読みしてしまいました。
堀江本は4冊目ですね。
- 作者: 堀江貴文
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2015/01/13
- メディア: Kindle版
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紙の書籍の3分の1の価格までディスカウントされていたもので。
実は売れてないのかな、コレ。
内容をざっくりいうと、過去の書籍の生い立ち部分を詳細化+オン・ザ・エッヂ創業から逮捕・服役・社会復帰あたりまでの自叙伝。 アニメでいうと総集編を映画化したような感じ。
別にホリエモンマニアって訳ではないので、今まで文章化されていなかった内容をどれぐらい含んでいるかはちょっと判断できない。
とは言ってもただの事実の列挙ではなく、当時何を考えていたかという点に重点が置かれているという印象。
近鉄買収騒動あたりからのリアルタイム世代としてはかなり面白かった。ホリエモンこと堀江貴文氏といえばlivedoorであるが、 それ以前からの社名であるオン・ザ・エッヂと言う名前。実は昔、アスキーからでていたLinuxマガジン(Linux Magazine)にもちょろっと社名が出ているのをみた覚えがある。
根拠のない自信
基本的にはホリエモンの反骨精神あふれる自伝であるが、印象に残ったのは次のフレーズ。
中学高校と勉強していなかった堀江氏、高校3年、東大受験を決意すると…
難しいことなんてなにもない。集中力さえあればできる。僕のポテンシャルは決して低くないのだから。(第二章 パソコンと思春期:実家を脱出するには東大に行くしかない)
会社創業時も…
どんな会社だって、誰かが起業するところから始まったのだ。 僕にできないわけがない。 (中略) やれる。ぼくはきっとやれる。(第五章 新米社長:見よう見まねの事業計画書)
自分の能力を信じて疑わないというか、根拠のない自信。ではあるんだけど、終始一貫、これがブレない。結局これに尽きるように思う。 「明日から本気出す」とか「勉強したら負けだと思っている」なんていいながらただダラダラし続けて終わるかどうかの境界はこの辺りにあるのではないか。
改めてホリエモンの幼少期について読んでみると、どこにでもいそうな田舎の子供に思える。学校および家庭の両方で、かなりの不合理な仕打ちを経験しているように読める。逆に言うと、不合理な体験の数々を経験したからこそ、あの際立った合理主義思考に行き着いたのかと思うと興味深い。
ニッポン放送買収事件
良くも悪くもホリエモンの知名度を一気に高めたあの事件。当時は毎日、夕方のニュースで一進一退の攻防をワクワクしながら見ていましたが…。 当事者である堀江氏側の目論見をあれから約10年経って知るというのは感慨深いですね。
テレビ局を買収してどうするの?テレビにlivedoorのURLを表示してもそれほど変化はないんじゃないか?と思いなが見ていました。 フジテレビと和解(?)したときの、あのホリエモンの猫なで声の記者会見も印象的でしたが。
SBIの北尾氏の記者会見の、自分の頭を指差してくるくると指を回すホワイトナイト宣言とかね。
さて、本書のホリエモン側の言い分を読んでみた感想。まあなるほどね、という感じでしょうか。 どうやらテレビ局の将来性を完全に見限った上で、広告媒体としての価値だけを見たうえでの買収だった様子。 Yahooに対するポータルサイトとしてのlivedoorの知名度向上を図るうえで、テレビという媒体を使おう、斜陽産業になることが確実であろうテレビ局とはいえ、あと数年は役に立つという計算。
当時としてはちょっと先をみすぎていないか、テレビの将来性について悲観しすぎでは?という気もします。数年前からテレビ自体を所有していない私としては、まあ外れてもいないのか、とも思えなくはないです。ただ、ラジオが未だに存続しているように、テレビ局自体が消滅するかといえば、それはないでしょう。
今となっては目的の割には大きすぎる博打ではなかったかと思います。経営者としての慢心もあったのかな?
ライブドア事件、そして
あと印象的だったのは人材採用。基本的に知り合いのつて、つまりコネ採用と大学の掲示板が中心だったようです。あまり新卒一括採用みたいなことをやる以前にコケた感じですが…。 問題は件の宮内氏でしょうか。
livedoor本社への強制捜査後に横領が発覚したとかいう宮内氏ですが、度々事後承諾で物事を進めていたり、かなり問題あったように書かれています。学歴詐称やら何やら、きな臭さ抜群…。ワタミの渡辺美樹氏も外部から招聘した経理担当と揉めたとか著書に書いていたように思いますが、経営者にとっては財務・経理を任せる腹心の部下をどれだけ信用できるかがキーポイントなんですかね。人を見る目の重要性。
まとめ
最後はいつもどおり宇宙開発云々といういつもの夢物語でおしまい。前回の『ゼロ なにもない自分に小さなイチを足していく』がどちらかというと人生論だったのに対し、こちらは自叙伝、要するに前半生をまとめた自伝ですね。恥ずかしいエピソードの含有率はこちらの方が多めです。
娯楽として、または堀江氏個人への興味という観点から言えばこちらがオススメかと思われます。
それではまた。