知識のブラックホール

本とかオーディオブックとか。知識収集活動全般。

中東情勢をより深く理解するための本(書評:『私はなぜイスラーム教徒になったのか』)

イスラム法学者として有名な、中田考氏に対するインタビューを再構成して書籍にしたもの。

氏の生い立ちからイスラム教に入信、留学などのエピソードを通して現代のイスラム教徒の実情を紹介している。

読みやすい文章でサクッと読み終えた。

中田氏がイスラム教徒(本文ではイスラーム教徒)になった理由そのものよりも、エジプト社会の風潮・価値観サラフィー主義などイスラム教徒が何を考えているのかの解説の方が面白いと思った。

例えばエジプトのタクシー料金に定価という概念がないとか、サラフィー主義者の最大の敵は黒魔術だとか。

マスメディアの報道によるイスラム社会への偏見を払拭するにはイスラム教を解説した新書を読むよりこの本の方が断然おすすめです。

以上。

過去の著作の劣化コピー(書評:『他動力』)

多動力 (NewsPicks Book)

多動力 (NewsPicks Book)

Kindle Unlimitedの対象になっていたので読んでみました。

過去の著作を読んだことのある立場からすると全然退屈。これはひどい

過去の著作やTwitter、インタビューの内容を表現をちょっと変えて再編集したような本。

アニメでいうと総集編みたいなもの。

モノ売るってレベルじゃねぇぞの書籍編。出版社は読者をナメてないか?

失望の極み。出版業界はこういうことするのはやめてほしい。

現代社会にはびこる欺瞞にだまされないために(書評:『みんなちがって、みんなダメ』)

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概要

みんなちがって、みんなダメ

みんなちがって、みんなダメ

表紙に惹かれて購入。勝手な推測だけど表紙に少女イラストを持ってきているのは漫画版の『君たちはどう生きるか』の表紙に対するパロディ*1か何か(当てつけ?)。

『君たちはどう生きるか』の表紙のガリ勉っっぽいメガネ男子に女子高生っぽいイラストをぶつけるという発想は実に面白い。

イスラム法学者である中田 考氏にインタビューした内容を文章としてまとめ直したもの。第5章はインタビュー形式のまま掲載されている。

サブタイトルは「身の程を知る劇薬人生論」。帯の煽り文句は「『君たちはどう生きるか』を読むとバカになる!」。

「装画:堀泉インコ」とあるので表紙のイラストの担当はこの人

内容について

普通の人が幸福に暮らすにはどうするかというテーマ。同時に自由や平等といった現代の西洋思想をイスラーム*2思想の立場から批判している。

バカという単語が乱発されているので不快に思う人は注意が必要。関西の人はバカをアホに読み替えるべし。

まず、バカの定義から。中田氏の定義は「自分自身が思っている自分と、実際の自分自身のとがちがうことに無自覚である」というもの。

それに対して賢い人間の条件は以下の3つを知っていること。

  • 「何がしたいか」
  • 「何ができるか」
  • 「何をすべきか」

いずれも主語はは「自分」。バカというよりは自己啓発セミナーやきれい事に踊らされている凡人という理解が自然だと思った。バカ正直な秀才から世間知らずで騙されやすい人まで範囲は広い。

日本と西洋、イスラーム社会の3つの社会の価値観を比較して面白い。

平均レベルの人が自分が優秀だと錯覚して夢を見ると不幸になるというのが大意。

凡人が幸福に生きるにはどうするかという答えは第5章。

なお、結論は「身の程を知れ」。奇しくも天下取りの秘訣を問われたときの徳川家康の答えと同じ*3

面白いと思った指摘・記述

  • 民主主義の実態は制限選挙寡頭制
  • 自由や平等は幻想であり(目指すべき)理想
  • 「人間は平等」というスローガンの裏には文明人に限るという前提が隠れている
  • 議論のスタートラインは中立な立場から(「テロは良くない」ではなく「テロとはなにか」から始める)
  • ビンラディンは欺瞞が許せなかった
  • ヨーロッパやアメリカの奴隷(slave)に対応する単語はアラビア語にはない
  • イスラーム社会の奴隷は神に対する奴隷
  • リベラリズムはバカを助長するシステム
  • 外見による差別は批判されるのに能力による差別は放置

世間一般にイスラム教自体への知識が根本的に不足しているのではないかと思う。

感想

これまでに読んだ宗教系の人間が書いた本の中では個人的に一番面白い。何より論理的で明快。

理系の人で文系中心の社会に疑問を感じている人は5章だけでも読むといい。なぜ文系の人間が社会を動かしているのかヒントが書いてある。

現状に不満があるけどどうしていいかわからないとか、建前だらけのきれい事にうんざりしている人におすすめ。

まとめ

「自分が何をなすべきか」、さっぱりわかっていないので私も立派なバカということ。「何がしたくないか」、については割と答えられるんですが。

Amazonで一時的に品切れになっているようです。この本が売上ランキング上位に入って「君たちはどう生きるか」と2冊並ぶと表紙のイラストが対照的で面白いのではないかと密かに期待しています。


P.S. 表紙のイラストだけでもいい感じなので小難しいことは気にせず買っちゃいましょう!!

*1:随所に『君たちはどう生きるか』への批判があることからの推測

*2:本文の表記にしたがってイスラムではなくイスラームを使用

*3:そんな質問をするなという意味だっただろうと思う

合法的な経済的ズルさの身につけ方(書評:『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方2015』)

人生設計から投資や節税についての著者の見解を書いた本。 不動産投資と株の話は流し読みで、最初の出版業界の構造的問題の解説と、最後の起業による税金対策のトピックの部分をじっくり読んだ。

最後の方の税金対策と税務署側の事情の解説は非常に有益。

節税のノウハウを網羅しているわけではないが、基本的な考え方、ヒントとしては素晴らしいと思う。

節税の話については以前の自分だったら間違いなく不快に思ったはず。少なくとも今はそう思わない。

だって愛政府心ゼロだから。愛国心もほとんど無い気もするけど、外国人の不正に苛立つということはゼロではない。

むしろ不快に思ったのは税務署のOBが税理士になっているという話。世間知らずで知らなかった。

こういうのは税務署OBが開業する際に、管轄していた地域以外の地域を選ばせればいいと思うんだけど、そうはならないんだろうな。

既得権益としての中小企業経営者、自営業者という視点もあまり考えたことがなかった。

気になったポイントとしては今後の職業の話。クリエイティブな仕事を奨励しているけど、今後の価値観の変化から行くと(誰もやりたがらない)ブルーカラーの 仕事のほうがトータルで幸福な人生という可能性はあると思う。

ブルーカラーにも格差は生まれるだろうけど。


まずは個人事業主で法人成りを目指したいかな。法人成りで節税できるようになりたいと思う次第。

以上。

瀧本先生、エリートの自画自賛はもういいよ(書評:『君に友だちはいらない』)

君に友だちはいらない

君に友だちはいらない

自画自賛、我褒め。

著者の経験や(著者が)投資している企業の成功事例を中心にチームビルディングを語っている本。

ただの仲の良い友だちではなく自分の人生がかかるようなプロジェクトに一緒に本気で取り組める戦友を能動的に「つくれ」といいたいらしい。

どうも話が冗長で最後のまとめは唐突。

確かに参考になる点は多い。特に有名な企業*1について創業したときの創業者の年齢を取り上げている箇所は参考になった(20代から30代が多い)。

あとは著者の自慢話。

少なくとも大学進学できる経済力と理解のある家庭でないと話にならない。

同じ著者の過去の著作に対する好印象が吹き飛んだ。

オトバンク*2の創業者をずいぶん贔屓にしているようだが、理解に苦しむ。

勝間和代氏の自慢話よりも残念な感じ。

おすすめしない。

*1:アメリカだけでなくパナソニックなどの日本企業も

*2:現在はともかくパスワードを平分で保存していた会社。現在は不明

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