書評:『日本語のしくみ』
人文系の本は久しぶり。外国人向けの日本語教育について疑問に思うところがあって、日本語教育関連の本を図書館で何冊か借りてみました。今回はまず一冊目。
今回紹介するタイトルは『日本語のしくみ (言葉のしくみ)』。
- 作者: 山田敏弘
- 出版社/メーカー: 白水社
- 発売日: 2015/03/07
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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概要
「言葉のしくみ」シリーズのうちの一冊らしい。
どういう層が対象読者なのか、よくわからない。日本語について体系的に解説しているというよりは、日本語文法の典型的なトピックを幾つかピックアップしてアラカルト風にまとめた本という印象。
一般大衆向けの教養本というよりは、言語の比較研究に興味を持った人への入超門書でしょうか。
また、縦書きかと思ったら意外なことに横書きでびっくりした。確かに英語との比較箇所があるので横書きの方が違和感ない箇所も多いです。
価格は146ページで1600円と少し高め。逆いうとページ数が少ない分、それほど時間をかけずに読める。
第1部、第2部の2部構成。
ただ、第1部に1〜3章、第2部に1〜5章と違和感あるナンバリング。
章番号ですが、普通は第2部は4章〜8章とするかとと思います。各章ごとに第1節、第2節…ならわかるのですが。四百ページを超えるような書籍の場合で、章番号は連番で、第1部(パート1)、第2部(パート2)とグループ化するんじゃないかかと思いますが、どうなんでしょう。
内容について
自分の母語だけに無意識に使い分けている「てにをは」や「が」「は」など論理的に説明されており大変勉強になりました。 言われてみればなるほど、という内容がたくさんありました。さすがに細かい内容が多いので個別に引用はなしです。
関東と関西の違いなど、地域によるアクセントや微妙な言い回しの違いについてはなかなか面白いと思いました。
ただ、コンピューター技術者の端くれとしては下記の一文にはショックを受けました。
否定といえば、最近、コンピュータで「0個のファイルが見つかりました」のような言い方を突きつけられることがあります。(p.41)
これが文系脳なのでしょうか。『突きつけられる』っておいおい。確かに日本語では「ファイルが見つかりませんでした」というメッセージが自然。ぶっちゃけ作る側のサボり。
いくらなんでも、『言い方を突きつけられる』って。
……脱帽です。「表現に出くわす」ならわかるけど、『突きつけられる』ですよ?
著者の意図としては日本語の不自然さを強調したいに違いない。しかしながら、例示している日本語の不自然さよりも、著書の表現の不自然さの方が際立つ。
しかも滲み出るITへの嫌悪感。
すごいセンスだと思いました。日本語の専門家だけのことはありますね。
組版について
なぜか微妙に良いにくいので、理由を検討した結果、組版に起因するのでは?という見解に到達した。
- 本分の余白が狭いせいか、微妙に読みづらい*1
- 見開き2ページ全体がコラムになっているので、コラムと本文の境界がわかりにくい
- 本文に混ぜても遜色ない文章が左右見開きでコラムという名前で記載されている*2
- 判型が中途半端なサイズで、一般的なビジネス書より小さいせいか、妙に読みにくい*3
まとめ
普段、意識せずに使っている日本語について、目からウロコなネタがたくさんありました。
読みやすいし別に悪い本ではないと思います。新書形式だと納得のいく内容ですが、価格を考えると物足りない感じがします。
図書館で借りたからいいものの、定価で買うかと言われるとちょっと迷う。
日本語学校の先生向け、あるいは大学のなんとか言語論のレポート課題の参考文献としては非常に良いと思います。
それではまた。