『嫌われる勇気』とホリエモン その2
ちょっと書きそびれたことがあるのでその2
あくまでも本人の著作を性善説にもとづいて読んだ上での感想です。
アドラー心理学の実践者としてのホリエモン
世間的には目立ちたがり屋、つまり承認欲求の権化のように思われているホリエモンであるが、実際どうなんだろう。
少なくとも少年期については「退屈な田舎」から抜け出したい、という思いが行動原理のひとつであったように見える。 もう一つは遊びへの熱中。
個人的な解釈としては、収監前については会社のイメージ戦略としてメディア露出を意図的に増やしていたと思っている。 服役後については、収監前に築いた知名度を(生活費を得るために)活用しているのかな、という認識。
承認欲求を満たす、という側面だけであれば、youtubeで動画を垂れながしていれば十分で、何も会社経営にまで関わる必要はないだろうし。堀江氏の「はたらきたい」というのはアドラー心理学でいうところの「他者貢献」なんではなかろうか。 アドラー心理学においては、例えば親の財産を食いつぶすドラ息子、寝たきり老人でも世界の役に立っている、と考えるらしい。
なので、金銭という見返りのためであっても自分の外との関わりがあれば何でも「他者貢献」になるはず。 堀江氏の場合は、承認欲求がメインではなく、他者との関わりをもとめて「はたらきたい」という意思がでているのではないか。
『嫌われる勇気』などのアドラー心理学関連本を読まれていないとさっぱりだと思うが、中途半端な説明はかえってマズいと思うのでGoogles先生にお尋ねいただきたい。
結局、ホリエモンは何を成し遂げたのか?
旧livedoorのサービスで認知度が高く、存続しているのはRSSリーダー(Livedoor Reader、現在はLive Dowango Reader:LDR)と、livedoor Blogというブログサービスだと思われる。
どちらも画期的という感じはあまりない。球団買収やニッポン放送株の取得など世間をおおいに騒がせたホリエモンであるが、特にこれといったプロダクトは残していないといってもよさそう。
具体的なプロダクトは残さなかったが、少なくとも世の中の空気を変えたのは確かだと思う。200X年代ののベンチャーブーム、企業買収とその対策の必要性など社会へのインパクトは大きかったと思っている。「空気を読む」ことが美徳とされる日本社会で、世間の空気を書き換えて見せたことは大きいと思う。
なぜあんなに反感を買うような振る舞いをしていたのか?
いわゆるライブドア事件以前の、ホリエモンの言行について、当時はなんとなく違和感があった。 私の違和感は大きく以下の二つ。
- わざわざ世間(中高年)の反感を買うような振る舞い
- 『「時価総額世界一」を目指す』という(当時の)目標設定
最近の堀江貴文の言行については、テレビを保有していないのでネットや書籍でしか知らない。それにしてもライブドア事件以前の彼はなぜあのような「わざわざ他人の反感を買うような振る舞い」をしていたのか?
そしてもう一つ『「時価総額世界一」を目指す』というもの。定量的に評価できるものなら売上高でも利益でも利益率でも問題はないはず。
一つ目の違和感について。これは『ゼロ』を読んだ印象として、世間の印象より不器用でナイーブだったんでしょう。織田信長が「うつけ」のフリをしたのと同じようなものかと思えなくもないが、結果として悪影響が顕著なのでそれはなさそう。少なくとも他人の目を気にするジコチューではなかった様子。
結果さえ出せば文句は言われないでしょ、というどこか子供っぽい考えがあったんだろうと思う。この発想は結構プログラマに多いし、自分もこれはよくわかる。形式ばかり気にするお役所仕事や権威主義へのアンチテーゼ。もしくは一種の強がりか。
二つ目の違和感について。
当時はなぜ時価総額なのか疑問だった。定量的に評価できるものなら業績を直接反映するものでなく、市場シェアとか顧客満足度とかでも良かったはず。わざわざ純利益や利益率を使わなかったところに何か負い目があったのかとも考えられなくはない。
企業の社会的イメージ、ようするに風評による影響の大きい時価総額を目標にしてどうすんの?と思ったものだ。
個人の想像に過ぎないが、会社の業績そのものはともかく、状況に至るプロセス、つまり、理屈の通じない両親に対して、中学受験や東大合格という実績で親の反対を抑え込んだ経験が原点ではないだろうか。他の業界の企業と比較するとき、業界ごとに利益率というのはおおまかな相場があるので一概には比較できない。また売上高では企業に規模の面で不利だと考えたのか。はっきり言えば「僕の会社はトヨタよりスゴイんだ!!」と言いたかったのかな。
ライブドア事件以前の堀江氏にとって、企業としてナンバーワンであることを示すわかりやすい指標が時価総額だったのだと思われる。
時価総額という指標を選んだことについて、虚栄心か、あるいはなんらかの嘘が含まれているのかも知れない。その辺りが逮捕・有罪判決・収監へと繋がったんじゃないかと思う。極端なことを言えば、斎藤一人さんのように、「納税日本一」を目指していれば会社の向かう方向も違っただろうし、逮捕されるような事態までには至らなかったと思う。
少なくとも良かれ悪しかれ日本の若者に影響を与えたのは間違いない。
それではこんなところで。
- 作者: 岸見一郎,古賀史健
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