『 アカマイ 知られざるインターネットの巨人<アカマイ>』 読了
アカマイ 知られざるインターネットの巨人<アカマイ> (角川EPUB選書)
- 作者: 小川晃通
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / メディアファクトリー
- 発売日: 2014/08/11
- メディア: Kindle版
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アカマイというコンテンツ・デリバリー・ネットワーク(Contents Delivery Network : CDN)事業を中心にしている会社についての本。
参考:コンテンツデリバリネットワーク - Wikipedia
もともと社名は聞いたことがあるし、CDNという概念は知っていたが、もう少しアカマイという会社の実情について知りたかったので購入。
発行が2014年ということでやや情報が古い部分がある。
結論から言うと期待はずれ。
知らなかった話も結構記載されているけど、技術的な概要は元からイメージ通りだった。
もちろんプロパイだとの力関係についてなど、興味深い部分はあったが、特定の会社を取り上げた本としてはイマイチ。
もともとインターネットの仕組みをよく知らない人で、CDNとはなんぞやと言う人向けだと思う。
ただし、全くインターネットの仕組みを知らない人が理解できるかと言うと、ちょっと苦しいかもしれない。
以上です。
書評:『日本人の英語はなぜ間違うのか?』
- 作者: マーク・ピーターセン
- 出版社/メーカー: 集英社インターナショナル
- 発売日: 2014/11/26
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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『日本人の英語 (岩波新書)』、『続・日本人の英語 (岩波新書)』で有名なマーク・ピーターセン氏による日本人にありがちな不自然な(場合によっては間違った)英語の ついての考察エッセイ。
章構成としては以下の通り。
まえがき 第1章 英語教科書が抱える問題 第2章 時制が足りない日本人の英語 第3章 冠詞theと数への無関心 第4章 基本動詞・助動詞を使いこなす 第5章 仮定法の基本を理解する 第6章 人気者"so"の用法に関する誤解 第7章 itとthatを使い分ける 第8章 単語の無意味な「繰り返し」を防ぐには? 第9章 「論理の飛躍」が多すぎる 第10章 自然な英語を書くために あとがき
各章とも英語で文章で書くうえで有意義な内容になっています。正直なところ、中学の教科書のダメ事例はスルーして、実際に大学生の書いた英文とその修正例を中心に読むのが良いと思います。
また、エッセイ本としての本書の結論をまとめると、中学校の教科書にある不自然な英語と大学生に良くある間違いに共通点があるというのがピーターセン氏の主張。そもそもの問題は文部科学省の学習指導要領にあるらしい。
中学校の英語の教科書にはおかしな英文が多数掲載されているという 事実の指摘と、それが大学生の英作文に悪影響を与えていると考えられる例を英語ネイティヴの視点で 丁寧に解説されている。本書では、この不自然な英文が教科書に掲載されるに至った原因として学習指導要領による学習内容の制限を挙げている。
日本の中学生用の検定教科書を批判が目的の本ではなくて、より自然な英文を書くためのヒントを書いた本ですので誤解なきよう。
具体例の幾つかは私も中学生の頃に見た覚えのある文章だったりして、びっくりというか、がっかりというか、文部科学省に対して釈然としないものがあります。
面白いのが英語の文法とは別に教科書に出てくる文章自体への批判。
いずれにしても、中学の数学や理科では高度な内容を教えるのに、なぜ英語の教科書の内容はこんなにも「幼稚」でないといけないのでしょうか。 (p.148 より引用)
中学校の頃は受験に意識が向いていて、こういう観点で英語の教科書を読んだことはありませんでした。
せっかくなので「あとがき」に描かれている著者による日本の中学校における英語教育に対する提言を引用しておきます。
理想的には、中学の英語教科書で、①過去完了形は過去形と一緒に、②仮定法は未来形と一緒に、③非制限用法は制限用法と一緒に紹介したいものです。 これらの文法事項を、豊富な例文を交えながら対照させながら覚えてしまえば、少なくとも、"用法をいつまでたってもよく把握できない" という生徒の数はかなり減ると思われます。 現場の先生方にとっても、最終的にはそれがいちばん効率的に英語を教えることにつながることになるのではないでしょうか。 (p.172 より引用)
2014年に出版された本なので文部科学省のお役人さまも読んでいておかしくないと思うんですが、どうなんでしょうか。 例文を対照させるという発想であれば、英語で書かれた文法書として定評のある 『English Grammar in Use』、『Essential Grammar in Use』もニュアンスのことなる英文を並べて説明している箇所がかなりあったように思います。
なお、マーク・ピーターセン氏の指摘に対する反論も存在しています。以下は一例(SUNSHINEシリーズの執筆者による反論)。
読みにくいPDFであるがざっくり要約すると、①(マーク・ピーターセン氏が指導したであろう)大学生が使った教科書は旧版である、②そもそも学習指導要領にちゃんと従って作成しているから問題ない、③高校でも中学校の倍以上の時間を英語を勉強しているはずであるので中学生用の教科書だけの責任にするのはおかしい、という主張か。
語感についてはネイティブ意見が分かれるケースがあるだろうというのは理解したが、ピーターセン氏の方は「自然な英文を書くために」という視点で不備を指摘しているのでこの反論は枝葉にこだわりすぎてずれているように見える。あるいは自社の教科書以外に対するマーク・ピーターセン氏の指摘をちゃんと読んでないのか。
私は英語教育者ではないし、私が中学生だったのは十数年前だし、教科書もSUNSHINEシリーズではないのでなんとも言い難い。中学の教科書だけの責任ではないというのはそうかもね、と思ったのは確かである。
しかしながら、マーク・ピーターセン氏の方は、(中学生を子供扱いして?)変な制限をかけている学習指導要領に疑問を呈しているように読めるので、 (ポジショントークくさいが)「中学生に英語を教えるための工夫」と称して学習指導要領を金科玉条のごとく掲げたでの反論は説得力に乏しい。
検定教科書なので学習指導要領従うしかないのだろうが、英語教育者として学習指導要領そのものに携わったりしたのであろうか?
「中学生に英語という外国語を教えるにはどうするのが良いか?」というのは難しいテーマだろうというのは想像に難くないし、理解するが、 この反論内容はなんとも残念な内容に思える。教科書作成サイドとしての「気持ち」はわかるが、せっかくの指摘を理不尽だの不穏当というのはかなり感じが悪い。
いや、気持ちはわかるつもりです。お上の指示である学習指導要領の範囲で教科書作ったはずが、いきなり批判対象になってるわけだから。
反論を書くだけでなく、マーク・ピーターセン氏は大学生の英作文に見られる問題点の多くが中学の検定教科書に見られると指摘しているのであるから、中学生用の教科書だから問題ないではなくて、 改善のための参考にする、ぐらいのスタンスを示した方がまだよかったんではないかな。
まあ教科書作成サイドの反論はともかく、なかなか面白いエッセイ本です。というか、日本の中学生用の検定教科書を批判するための本ではなくて、より自然な英文を書くためのヒント満載の本です。
ではまた。
書評:『現役アフィリエイターが教える! しっかり稼げる Googleアドセンスの教科書』
現役アフィリエイターが教える! しっかり稼げる Googleアドセンスの教科書
- 作者: 三木美穂
- 出版社/メーカー: 技術評論社
- 発売日: 2015/12/25
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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比較的お堅いイメージの技術評論社からこういう「稼げる」とか「アフィリエイター」といったキーワードのタイトルの本が出るというのは意外。
タイトルはちょっとチャラい感じがしますが、内容は極めてまっとうです。
内容について
当たり前のことがとても丁寧開設されている。逆に言うと、公式ドキュメントやすでにWeb上で書かれていることがほとんど。
自分でググって情報収集するのが面倒、あるいは断片的な情報ばかりでどうにもよくわからない、という場合はオススメ。
特別なことは書いてないけど、わかったつもりになっていたり、知ったかぶりになっていないかを自己点検するうえでは良い本だと思う。 特にスマートフォン対応についてはかなりページが割かれているので一読の価値あり、です。
気になったところ
各ページでURLが紹介されているのはいいのだけれど、手入力でhttp://...と入力するのは面倒なのでQRコードを掲載するか、どこかサポートページに紹介しているURLの一覧を掲載してもらえると助かる。
livedoorブログのカスタマイズ事例が掲載されているけど、他の大手ブログサービスの例があったらなお良かったかと思います。
まとめ
本書を読んで改めて認識したことは、アフィリエイトにしてもアドセンスにしても地道な努力が必要であるという点。やはりこれにつきます。
それではまた。
IT業界への愛にあふれた一冊?(書評:『「納品」をなくせばうまくいく』)
著者のIT業界、特にシステムインテグレーション業界へのアツい愛を感じる一冊。
ITに限らず現在の商慣行、労働契約のあり方に一石を投じる点で興味深い。
- 作者: 倉貫義人
- 出版社/メーカー: 日本実業出版社
- 発売日: 2014/07/18
- メディア: Kindle版
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購入したのは去年でKindle版。
著者のブログ:Social Change! ソニックガーデン SonicGarden 倉貫義人のブログ
著者は仕事が好きでしょうがないというタイプの人ではないかと思う。
本書で言うところの「納品」をなくす、というのは受託開発における納品で、ビジネスモデルを受託開発から月額料金方式のサービスという形に変えるという主張。 著者の経営する会社における実例を挙げて解説している。
一番の特徴は完成責任を請け負わないという点。
契約したからどんな困難があっても履行しろ、という発想が人を不幸にしているケースはかなりあると思う。
完成責任を負わない、まさにこれこそ契約書で不合理をゴリ押す、という現在の商慣行への一番の反抗ではないか。 雇用契約にしてもそうなんだけど、暗黙のうちに業務を完遂することを保証させられてるケースのなんと多いことか。
本書で登場する顧問弁護士ならぬ顧問エンジニアという発想は面白い。
また、納品がない、つまり明確な納期がないということは、プログラムを書く側からすると納期のために妥協しなくていいという意味でやりがいにつながる。 納期のために自分で自分のプライドを傷つけるようなひどいコードを書かなくていいのは(人によるけど)大きいと思う。
一番印象的だったのは下記の箇所。少なくとも普通のIT業界関係者はこういうことは言わない。とにかく受注して納品しないとお金が入ってこないから。
顧客にとっては、ソフトウェアは完成させるだけでは意味がありません。それ以後にどれだけソフトウェアを「使う」ことができるのか、に意味があります。( 位置No. 274)
また、受託開発そのものはともかく、日本の技術者全体のために以下の考え方は広まって欲しい。
実は、ソフトウェア・エンジニアと、時間で働く人材派遣は、相性がよくありません。 本来、ソフトウェア開発におけるエンジニアの仕事は、時間に換算できるものではないからです。 決められた時間内に同じ仕事場の一角に座りつづて仕事をすることではなく、仕事の成果を見るべきです。 (強調は原文ママ)(位置No. 494-496)
エンジニアに限らず頭脳労働者は時間給と相性が悪いと思うのでこれは全面的に同意。すでにあるものを量産するのと新規開発するのは別に考えて欲しい。 ただ単に時間当たりの生産性で評価されると、試行錯誤が伴うであろう新しいことへのチャレンジを忌避するようになってしまう。
本書全体への感想と、個人的に考えたこと
受託開発系のIT企業としては一種の理想郷かもしれないが、実際に働きたくはない。理由は良くも悪くもしんどそうだから。エンジニア云々と言ってるけど、ほとんどコンサルタント化している印象。毎週毎週が全力疾走というイメージ。
人月単価という呪いからは逃れたかもしれないけど、「人」で勝負する点では変わらない。人数を集めて「量」で勝負するか、少数精鋭でスタートアップ企業を相手に「質」で勝負するかの違いに見える。商売のやり方としては月額料金システムで継続的に収入が入るので非常にいいとは思う。
ただし、あくまでも「人」で勝負してる点では受託開発と根源的には変わってない。ビジネスモデルで勝負しているように見えていまひとつシステマチックになっていない。お金を稼ぐ仕組みとしては新しくないし、働く側が楽かと言われると疑問。
ビジネスモデルが変わっていても受託開発自体が好きでない限り結局は同じだと思う。
また、会社の規模もスケールしにくいし、SI業界全体に広まるかというと疑問*1。
やりがいとか達成感より時間当たりの収入とか、労働そのものを減らすという方向を目指せないものかと考えてしまう。
まとめ
IT業界で働き方に悩んでいる人には何かのヒントになると思う。著者の志は評価する。 ただ、自分としてはコンピューター自体は好きだけど、この本の著者のように受託開発(もしくはプログラミングそのもの)が好きかと言われるとそんなことはない。
Webサービスそのものに感動したり、面倒な作業をプログラムを書いて一瞬で終わらせたといった経験はある。プログラミング自体を楽しいと思ったことがないわけでもないけど。
そこに気づいたのが一番の収穫。
関連書籍
同じ著者の第二作。こちらは同じ事業所に集まって仕事することの必要性について問題提起している。
リモートチームでうまくいく マネジメントの?常識?を変える新しいワークスタイル
- 作者: 倉貫義人
- 出版社/メーカー: 日本実業出版社
- 発売日: 2015/12/17
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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*1:会社の規模を大きくしようという意欲はあまりなさそうな会社ではある
自由についての試行錯誤!?(書評:『自由をつくる自在に生きる』)
- 作者: 森博嗣
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2009/11/17
- メディア: 新書
- 購入: 28人 クリック: 1,154回
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森博嗣氏の、自由についてのエッセイ本。 実を言うと、この著者の本を読むのはこれが初めてです。
代表作の『すべてがFになる (講談社文庫)』の名前ぐらいは聞いたことがある、というだけです。
どこかのブログで紹介されていたので読んでみました。
概ねタイトルから予想した内容でしたが、期待以上でした。いい刺激になったと思います。
まえがきにある通り、具体的に自由になる方法が書いてあるわけではないです。
最後まで読んでもらっても、結局のところ、簡単には自由は得られない、ということがわかるだけだろう(それがわかっただけでも価値があるとは思うけれど)。(L.15)
しかしながら、いきなり「自由」と言われてもピンとこないのではないでしょうか。そもそも本当の自由とは何だろうか、というところからスタートするのが本書です。
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