書評:『日本語のしくみ』
人文系の本は久しぶり。外国人向けの日本語教育について疑問に思うところがあって、日本語教育関連の本を図書館で何冊か借りてみました。今回はまず一冊目。
今回紹介するタイトルは『日本語のしくみ (言葉のしくみ)』。
- 作者: 山田敏弘
- 出版社/メーカー: 白水社
- 発売日: 2015/03/07
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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概要
「言葉のしくみ」シリーズのうちの一冊らしい。
どういう層が対象読者なのか、よくわからない。日本語について体系的に解説しているというよりは、日本語文法の典型的なトピックを幾つかピックアップしてアラカルト風にまとめた本という印象。
一般大衆向けの教養本というよりは、言語の比較研究に興味を持った人への入超門書でしょうか。
また、縦書きかと思ったら意外なことに横書きでびっくりした。確かに英語との比較箇所があるので横書きの方が違和感ない箇所も多いです。
価格は146ページで1600円と少し高め。逆いうとページ数が少ない分、それほど時間をかけずに読める。
第1部、第2部の2部構成。
続きを読むホリエモンのセカイ評(書評:『君はどこにでも行ける』)
久しぶりに堀江本。
Twitter見てると失望するけど、本の中のホリエモンはまだ終わってはない、ような気がしてる。実業家としてはまた一世を風靡しそうではあるけど、日本のマスコミが取り上げるかどうかはまた別の話。
- 作者: 堀江貴文
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 2016/03/25
- メディア: 単行本
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内容紹介
目次は以下のとおり。
はじめに
第1章 日本はいまどれくらい「安く」なってしまったか
第2章 堀江貴文が気づいた世界の変化<アジア編>
第3章 堀江貴文が気づいた世界の変化<欧米その他編>
第4章 それでも東京は世界最高レベルの都市である
第5章 国境は君の中にある
特別章 ヤマザキマリ×堀江貴文[対談]
おわりに
ざっくり言うと海外を飛び回ってるホリエモンの目から見た世界情勢と日本の現状についての解説。日本にいたいならそれでいいし、外に出たいならそれもありだよ、的な感じ。
以下、感想など
購入したのは電子書籍のほうなのでページ番号とかはナシ。
第1章
- 大相撲はグローバル化の成功例らしい
- 逆にもたついてるのがJリーグ*1
- 「買収」より「バイアウト」。言葉のニュアンスで損をしないように言い換える?
- マイルドヤンキーはマイルドヤンキーのまま
- エリート層は外へ出て、さらに稼いでお金持ちになっていくらしい
- 外国人の大富豪のところに日本人女性が嫁ぐ時代
第2章
シンガポール
位置No. 653:
人は、生まれた場所で死ぬ義務はない。
名言。
タイ
位置No. 1028:
遊びがビジネスになったとき、誰が儲かるか? 当然遊びの達人だ。コンサルティングビジネスと同様に、遊びを極めたものだけが持っている知識が、高い値段で売れるようになる。ロボットに代用されない生き方の一つにこういう明るい可能性がある。遊びを極めれば、仕事になる。これまでと逆の考え方が、一つの勝ちパターンになっていくのだ。
ロボットに遊びはできないよね。これは面白い発見。ドラえもんののび太の「あやとり」みたいなもんだろうか。『遊びを極めれば』というのはきっと『何かを極めれば』とも言えるような気がしている。
第3章
アフリカ
リープフロッグ(カエル跳び)現象
位置No. 1633:
いま〝リープフロッグ(カエル跳び)現象〟が起きているのだ。 普通、技術は段階的な進化を遂げるが、従来のスタンダードなインフラの導入をひと足飛ばして、現在のニーズに合った最新技術のインフラを利用して、一気に最先端に進化する現象だ。
非常に興味深い。現金やクレジットカードをすっ飛ばして電子マネーとか、資本主義が不完全なままシェアリングエコノミーに移行する可能性とか、アフリカにはいろんな可能性はあるんだろう。
位置No. 1651:
教育は、義務教育を敷いている国はまだ少ないので、学校の代わりに授業アプリや受験アプリで勉強できるシステムが、取り入れられる可能性もある。 一度も学校に通っていない、大学にも行っていない、だけどものすごい才能を持ったアプリプログラマーが、アフリカの奥地で誕生してもおかしくないのだ。
これはすごいんじゃないだろうか。今日本で教育コストがどうのこうのとか言ってるけど、そもそも学校自体がなくなる可能性があるんだから。 就職の応募要件に、大卒以上とかじゃなくて「○○のオンライン講座を受講」とか「○○のアプリでスコアXX以上」とかいう日が来るかもしれない。
学校に行かない教育ってものにすごい可能性を感じる。日本でも"N高校"とか言ってるけど。あれはまだ高校という枠組みとカリキュラムがあるわけで。
途上国に小学校を作るなんてのはもう時代遅れなのかもなあ、とか思ってみたり。
第4章
この章の感想としては、外国人として東京に住むのが最強なんじゃねって感じ。日本は働くところではない。
おわりに
位置No. 2500:
僕は約3年前からノマドになった。家やマンションは持たず、日本でも海外でも、基本的にはホテル暮らしで、自由に移動を繰り返している。
いいなあ。是非ともこういう生活がしたい。
一番の驚き
アベノミクス以前の円高のイメージがあるせいか、日本の生産性の高さからいうと円高が自然と思っていた。もうそういうのは幻想なんだろう。
アジアの他の国から見た日本というのはは割安で便利なショッピングモールなんだろうな、と。アジア全体を地方都市に見立てて、郊外にあるイオンモールのイメージ。アジアの盟主とかリスペクトじゃなくて、週末に時間をつぶすところなんじゃないか。
対アジアという意味では根本的に発想をあらためないといけないのかと痛感した。
それと自分が普段、他の国の人口やGDPを意識してないなあ、と痛感した。これからはそういうところも踏まえてニュースとか見ようと思った次第。
まとめ
良くも悪くも人間の感情・心情について考えない人だなあと。海外旅行未経験なので*2、堀江氏の世界情勢の判断はちょっとわからない。でも大きく外れてはいないと思う。
堀江氏は日本国内の反韓感情など人間の感情面をわかってない印象。そういう感情面にとらわれずにロジカルかつドライに判断してきたら成功したんだろうけど。もし堀江氏がストレングスファインダーの診断を受けたしたら、間違いなく「共感性」は入ってないだろうし、それが彼の一番の特徴かな。
娯楽として読んでもいいし、一種の観光ガイドとして読んでもいいと思う。あと、今まで読んだ堀江氏の本の中では一番表現がこなれていて違和感がないという感想。
稼げる人間になるための言葉の使い方のマニュアル?(書評:『稼ぐ言葉の法則』)
今回の書評は『稼ぐ言葉の法則――「新・PASONAの法則」と売れる公式41』。
稼ぐ言葉の法則――「新・PASONAの法則」と売れる公式41
- 作者: 神田昌典
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2016/02/13
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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神田昌典氏の著作は久しぶり。学生時代に『非常識な成功法則【新装版】』を読んで以来。
今回は商品を紹介する上でのセールストークをどうするか、というテーマの本。
前半はいわゆるストーリーを考えるために、いかに商品の特徴を深堀りしていくか、そのための考え方の紹介。
後半は「貧す人(=うまくいかない人)」と「稼ぐ人(うまくいく人)」の対比から「稼ぐ言葉」とその考え方を解説。
いいと思ったところ
「はじめに」より(p.8):
多くの人は、商品を売るためには、気の利いた表現で描写すること——すなわち、「どのように(HOW)」言うか?」に注目するが、これは間違い。
もっともっと重要なのは、「何(WHAT)を、どの順番(WHEN)でいうか?」なのだ。 (強調は原文ママ)
表現にこだわることはあっても順番は考慮してないケースが多いような気がしますね。取扱説明書の章構成とか、注意書きの文章とか。
本文から(p.97):
一語がもたらす意識の微妙な違いは、仕事の質に大きな影響を与える。
意識の違いは、行動の違いを生み、行動の違いは、仕事の質の違いを生む。
なんかマザー・テレサが似たようなことを言ってたような気がしますが……。
公式17(p.136)より:
『文章は情報を伝えるのではない。”感情”を伝えるために書くのだ』 (強調及び色付けは原文ママ)
公式41『稼ぐ言葉の法則』(p.186)より:
「儲ける」は、漢字と部首に分けて考えると「信」「者」から成り立つように、顧客を信者化して、お金を得ようとする状態。利益を最大限に上げる目的で、顧客を依存させてしまう危険性がある。(中略)
一方、「稼ぐ」という言葉には、ずいぶん違ったニュアンスがある。禾偏からは、「家」に「禾」、すなわち愛する家族に糧をもたらす光景をイメージできる。 (強調は原文ママ)
「信」+「者」で「儲け」というのはよく会社の研修とかで出てくる話ですが、「稼ぐ」という表現はあまりビジネスマンは使わないように思います。 漢字の成り立ちはともかく、「稼ぐ」という表現の方が一生懸命というか、日本人的な感じがしますね*1。
他にも「稼げる人(富める人」の言葉と考え方が解説されてます。
微妙なところ
一部カットされた内容が購入特典としてWebからダウンロードできるようです*2。 未掲載の原稿の一部をネタにメールアドレスを収集しようという手口。まあフォレスト出版だったか、以前もなんか同じようなことをやってたような気がします。
孫子の兵法でいうところの、「利益があれば相手を動かすことができる」の実践例。
そりゃ原稿書くのは大変でしょうけど、そんなに顧客のメールアドレスが欲しいんかよってなりますよね。捨てメアド用意するだけの話なんですが……。 まあ一つのセールストークの具体例として分析するのがいいでしょう。
まとめ
さりげなく「ライフワーク」や「使命感」という単語が出てくるあたり、ただの自己啓発本とは違うな、という気がしました。 神田氏の真骨頂は、商売への罪悪感の払拭にあると思っているので、その点では予想どうりの内容かと。
一度読んで終わりにしないように、定期的に読み返したいと思います。
それではまた。
必要性というキーワードから読み解く現在とその先(書評:未来に先回りする思考法)
以前から気になっていた「未来に先回りする思考法 」を読みました。昨年の秋頃発売なのでやや古いですが。
ポイント還元20%でセール中、のようです。
- 作者: 佐藤航陽
- 出版社/メーカー: ディスカヴァー・トゥエンティワン
- 発売日: 2015/08/27
- メディア: Kindle版
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本書のキーポイントは、「テクノロジー」と、「必要性」、そして「当たり前は時代とともに変化する」といったところでしょうか。 前半は過去のテクノロジーによる社会の変化のパターンを必要性に着目しながら紐解いていくという内容です。 後半はテクノロジーとの向き合い方、先を読むためのヒントといったところでしょうか。
一貫して「技術」ではなく「テクノロジー」という表現が使われているのも印象的です。
他の章もなかなか素晴らしい内容ですが、一箇所だけ興味深い箇所があったので引用しておきます(第4章より)。
国や時代を超えて共通する進化の原理には、個人が好きに変えられるほどの自由度はありません。そして、社会で生きる限り、その法則性から誰も逃れることはできません。魚は川の流れに逆らって泳ぐことはできますが、川の流れそのものを逆流させることはできないのと同じことです。 川の大きさに対して、魚である自分がやれることの少なさを感じて、一時期、私はとても落ち込んだことがありました。自分の存在する意義がないように思えたからです。
ただ、それでも敷いて自分が存在している意味を求めるとすれば、それは「来るべき未来の到来をできる限り早めること」にあるのではないかと、私は思っています。
これがエリートの悩み、なんでしょうか。私も自分の無力感を感じることはしばしばですが、今までこういう発想にたどり着いたことはないです。
著者の言う「来るべき未来の到来を早める」、というのは現在の社会における課題が解決した状態、すなわち現在より不幸な人が少ない世界、ということのようです。未来が現在よりも「より良い世界」であるなら、その到来を早めよう、という考えなんでしょう。表現は違ってもMake the world better place. という梅田望夫さんの著作で紹介されていた発想と相通じる考え方だと思います。
アメリカのIT業界と、日本のそれの最大の違いはこのあたりかなと思います。世界をより良い状態へ(時計の針を進める方向へ)というアメリカと、経費削減とかKPIの最大化に躍起になっている日本。
非常に考えさせられる一冊でした。それとやっぱり気になる本はさっさと読むべきと痛感しました。
書評:『「週4時間」だけ働く。』
何故か分かりませんが、心に訴えかけるものがあったので読んでみました。 久しぶりに紙媒体です。
分厚いんですよ、これ。どこぞの英語文法本みたいに。
- 作者: ティモシー・フェリス,田中じゅん
- 出版社/メーカー: 青志社
- 発売日: 2011/02/03
- メディア: 単行本
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読み終えたのはいいですが、どこから手をつけていいのか、ちょっと整理できていません。
細かい交渉テクニックやツール、サービスも紹介されているのですが、要点を整理すると、次のようになるかと思います。
- 利益率の高い仕事・商材を見つけ出す
- 小さく試す(威力偵察?)
- アウトソーシングを活用する(他力の活用)
- ITの活用によるリモートワーク
上司とのネゴシエーションのための段取り、言い回し、ライセンスビジネスのための契約書の雛形まで掲載されており実践的です。著者が英語圏の方なので、当然、英語圏向けのツールや事例になります。 基本的な考え方は流用できるはず。
難点を挙げると、分厚いこと、それと細かいテクニックが多すぎて本質的な考え方をつかみにくいと印象を受けました。 いっそのこと2部構成にして、基本的な考え方、実例とテクニックとツール類の紹介、で分割してくれた方が良かったと思います。 もしくは実例を独立した章にして3部構成とか。
紹介されている例の多数で、まだ消化しきれていない感じです。
なかなか面白いと思った箇所を引用。
億万長者のインタビューの引用部分より(p.607 ボーナストラック)
キューバン 銀行に預けなさい。株式市場にお金を投資しろという馬鹿なことを言う人がいますよね。結局は市場の株価を上げたいからそうやって言う必要があるんですよ。彼らは何かの銘柄を売りたいんでしょう。(後略)
だから何って話ですが、株式投資への参加者が増える限り、株は値上がりするし手数料を取る証券会社は儲かりますね。そうですね。プロの投資家と勝負して情報と分析力で勝てると思うならやればいい訳で。
短時間で成果を上げたい、というよりは、時間や空間の束縛から離れたい、という方にオススメだと思います。
何はともあれビジネスのタネを見つけないとどうにもなりませんが。
それではまた。